第2日 自由

フェリー〜苫小牧〜襟裳岬〜百人浜キャンプ場(187km)
僕は、旅に出ることで、本当に自由になれるのだろうか。 台風の影響が心配されたが、苫小牧港へは13時過ぎ、定刻で到着した。 東京から釧路への船がなくなってしまってから、 北海道はさらに広くなったような気がする。 道東に行くには、苫小牧港からまる1日走らなければならない。 いろいろな事情で、旅が制限されてしまう。 それはつまり、たとえ一人旅でも、 僕は少しも解放されていないし、 誰かに支えられ続けているということか。 この道は誰かが作ったものだし、 この車だって、誰かが作ったガソリンで走っている。 僕は、誰かのおかげで走っている。 苫小牧から海沿いに進む。 新冠、静内、浦河。 ここはサラブレッドの牧場がたくさんあるところで、 サラブレッド街道などと呼ばれている。 競馬が好きな人にはどうだか知らないが、 僕にとってはあまり意味のない場所だ。 今日めざすのは、襟裳岬。 それ以外には、あまり見るものはない。 えりもの町に近づくと、海辺の様子が一変する。 平らな場所で昆布を干す姿は全く見られなくなり、 大きな岩、とげとげしい形の岩が増えてくる。 やがてそれがなだらかな丘陵に隠されて見えないようになったら、 そこが襟裳岬だ。 苫小牧に着いたときには暑いくらいだったが、ここは寒い。 風も強く、さすが襟裳などと妙な関心をしてしまう。 17時をすぎると土産店も店じまいを始め、いよいよ寂しさを増してくる。 僕は、今日テントを張る予定の百人浜へ急いだ。 岬から浜へ降りると、 そこは植樹によって見事に生い茂った森を抜ける道になっている。 日が傾くにつれ、道沿いの木々は空との境をいっそう強く浮きだたせ、 やがて闇に埋もれてしまうまでのほんのひとときを 鮮やかに過ごそうとしている。 僕は、少しだけ木々をうらやましく思った。 百人浜キャンプ場には、2つほどテントが張られていた。 僕は、その2つのテントから距離を置き、自分のテントを張った。 簡単に食事をすませ、ロウソクの炎を見つめる。 この炎が消えたら、テントの中は真っ暗になってしまう。 僕は、この小さな炎にすら、支えられている。 この夜は、シュラフに守られて過ごすこの夜は、 僕に 自由な夢を与えてくれるだろうか。                     2003/09/24 えりもにて